LOGIN「というわけで、新しい見習いさんたちが入ってきましたから、編成を細かくしていきたいと思います。今から呼ぶ人は各セクションの責任者です。その下にチームを作って、各チームにリーダーを置いていきます」 このお店も本格的な組織構造になっていくね。 でも、営業しながら新人を教育していくには少人数のチームを複数作って、それを束ねていくしかないかなーって。「見習いさんたちの配置はそれぞれお伝えした通りです。リーダーにくっついて回って、しっかりと仕事内容を学んでください。といっても、最初の3日間は合同研修です。ローラーシューズの練習を兼ねて、お店の中や周辺のお掃除をしてもらいます。それとお店のメニューもしっかり把握してもらう必要があるので、たくさん食べて、飲んで、このお店のすばらしさを真に理解する時間に充ててくださいね。あ、お酒は就業時間中はダメですよ。退勤した後に試飲できるように計らいますからね」 小首傾げてウィンク☆ 軍人の新人さんたちめっちゃ盛り上がってるー! えー、なーに? そんなにわたしかわいい? 好きになっちゃった⁉ ああ、お酒……そうですよね……知ってましたー! くそー、惚れ薬でも混ぜてやろうかしら⁉* * * そして研修3日目。「さすが軍の訓練を受けてるだけあって、みんな体力はありますねー」 重い物を運ばせても疲れた素振り1つ見せないし、みんな姿勢正しくキビキビ働いているね。「『足が止まったら死ぬ』最初に教えられるのはそれよ」 苦虫を嚙み潰したような顔でソフィーさんが言う。「戦争っておそろしい……」「でもそれは自分たちの身を守るためでもあるの。心が折れずに逃げることができれば、次の機会は必ず訪れる。無駄に死んではいけない。それがこの国の考え方よ」 特攻隊、みたいな国のために滅私を強要することがないっていうのはとっても健全よねー。それでも戦争はなくならないというのは悲しい話ではあるけれど、国という概念がある以上、それぞれの正義があるからどうしても争いが避けられない時もある、か……。島国だけど、やっぱり船が攻めてくるのかな? それともワイバーンに乗って、とか?「あなたたち! ここは軍ではないんだから、すれ違う時に敬礼はやめなさい。お客様が見たらギョッとするでしょ」 ソフィーさんが軍人さんたちを捕まえて指摘する。 まあ、いきなり違う組織
「はーい、というわけで、今日から臨時で一緒に働くことになった新人ちゃんたちでーす。みんな仲良くね♪」 さっすが軍人さんたち。 今日頼みに行って、今日そのままお店に連れてこられても文句ひとつ言わないのね。「まずはみなさん、オリエンテーションをしましょう。20人くらいのグループに分けていきます。お店の中、外、街中など、わたしたちの活動内容を確認してもらったり、料理の試食やローラーシューズの練習をしてもらいます」 それにしても人数多い! いや、基本的にみんな筋肉ムキムキで体がでかい! 全員お店のホールに人が入りきらない……。「ソフィーさん、さすがに178人一気に稼働は手に余りますね……。とくに調理場はスペースが限られているからどうにかそこだけでも別の施設を借りられたりしないかな……」 販売のほうは、わたしが、タッチパネル式魔力認証注文システムをちょっとずつ創って増やしていけばいいんだけどね。「通常の調理だけでいいのであれば、いくつかあてはあるわよ。そっちは任せてちょうだい」「助かります。とりあえずはざっと全員面接して、何をやってもらうか配属を決めないと……」 って、自分で言ってて178人面接ってマジか……。 でもやっぱり全員の『構造把握』をしないといけないよね……。コピーロボットほしいなあ。あとなんかよくあるやつだと、分割思考とか? あれどうやってるんだろ。そんなことしたら頭割れそうだけど。* * *「いやー、さすがに人数多かったですね……。面接だけで3日もかかっちゃいましたね」 わたしとソフィーさんは例によって面接疲れ……。ソファの上でぐったりだ。HP回復ポーションとMP回復ポーションをちゅるちゅる飲む。 さすがにこれだけ派手に使うと『構造把握』のレベルも上がるよねー。とうとうLv3かあ。途中から弱点部位とかいう変なものが見えるようになったけど、これがLv3の効果なのかな?「お疲れさま。さすがセドリックのところの子たちってところかしら。何人かは本気でうちにスカウトしたい子もいたわね」 ソフィーさんの弱点部位は……アキレス腱かあ。まあ普通みんな弱いところだと思うけど。あとは左肘。古傷か何かかな? それと全体的に腸が弱ってるみたい。お酒は控えたほうが良いんじゃないかなー。「はいはい、いましたね。それはまあ、少しずつ洗脳……じゃなくて説得
「ソフィーさん……驚かずに聞いてほしいんですけど、1つ提案してもいいですか?」 さすがにソフィーさんでもこの提案を聞いたら、腰を抜かしてしまうかもしれないね。言おうか言うまいかすっごい悩んで……2分も考えてしまったよ……。「改まって何かしら……。アリシアからこれまで驚かない提案なんてなかった気がするわよ」 まあそう言われるとそうかも? ソフィーさんてば、毎回イスから転がり落ちる勢いで驚いていたもんね。お笑い芸人ってこの世界でも流行るかな?「じゃあ言いますよ……」 気絶しないでよね。「覚悟は良いですか?」「大丈夫よ。きなさい」「では言いますね。誰にも聞かれたくないのでちょっとこっちへ来てください」 ソフィーさんを手招きして距離を詰める。 念には念を。とにかくやばい。「慎重ね……。そんなにやばい話なの?」「ええ、とても……」 ふぅ。「早く言いなさいよ」「わたしにだってタイミングがあるんですよ!」「こうして聴く態勢で待っているんだから今がタイミングでしょ!」「た、たしかに!」 でも改まって言うのははずかしいというか……。 ふぅ。「早く!」 めっちゃ急かしてくるなあ。 こんなこと言ったらソフィーさんが怒るかもしれないし……でも言うしかないか!「はいー。えっとね。移動販売めちゃくちゃ好調じゃないですか」「え、ええ。そうね。売れに売れてるわね。おかげさまで!」「それでー、なんかもう……調理も販売も天使ちゃん、ぜんぜん足りなくないですか……?」 天使ちゃんJrもソロ活動始めているんですよね。もうみんないっぱいいっぱいなんですよ。「そうよね……。スカウトしまくって天使ちゃんたちは100人もいるのに、まさかこんな日が来るなんて……」 ソフィーさんが遠い目をして何かに想いを馳せている。 いやね、だったらどういうつもりで100人もイケメンたちを集めたんですか……。ホントは働かせる気、なかったんでしょ。「普通に倍くらいの人数がいてもいいくらいの販売規模になっちゃってますよ。夜営業と2シフト交代制にしても、みんな疲労の色が顔に出てきてますもん」 とりあえずHP回復ポーションを休憩時間に飲ませてるけど、それだけでは心の回復がね。やっぱりちゃんと週3日くらいは完全オフの日がないともたないよ。「なんか次の天使ちゃんたちの候補のあて
「というわけなので、一部販売方式を変えていきます。今日から見習いの天使ちゃんJrのみなさんは、それぞれベテランのお兄さんたちのアシスタントとして一緒に回ってください。割り振りはこちらの紙に」 わたしとソフィーさんは急いで『龍神の館』に戻り、天使ちゃんたちを集めて説明をした。 路上販売の許可がでたこと。 100個の連動型アイテム収納ボックスを借り受けたこと。 つまり、これまで年が若かったり、お店に来たばっかりだったりでまだちゃんと稼働していなかった天使ちゃんたちを一気に教育する必要が出てきたわけですよ。 実践方式でね。OJTってやつですよ!「ローラーシューズの扱いにも慣れてもらわないといけないので、天使ちゃんJrのみなさんはくれぐれも無理はしないように。でも少しずつ周りの方に声掛けをして販売の経験をしてみましょう。基本的には呼び込みをして待つスタイルで。けっしてしつこくしてはいけませんよ」 キャッチセールスみたいになってしまったら、一気にお店の評判が下がるからね。「またガーランド伯爵が号外の新聞で路上販売のことをお知らせしてくれるそうなので、安心して売っていきましょう!」 気合の入った叫び声があちこちから聞こえてくる。 おおー。 天使ちゃんJrのみんながけっこうやる気だ! 忙しいお店の中で役割が与えられなくて悶々としていたんだね。ごめんね。お店のことを優先していてキミたちのことをほったらかしにしてしまっていたよー。「まかないも連動型アイテム収納ボックスから取り出せるので、休憩時間には自由にどうぞー。外は暑いからホントに無理しちゃダメよ。水分補給はこまめにね」 ニコイチペアの天使ちゃんたちが次々とお店を飛び出していく。 おー、新人ちゃんたちもがんばってー。 と、ロイスがアイテム収納ボックスを片手にお店から出て行こうしている。「ちょっとロイス? どこいくの?」 その背中がびくんと反応した。「えっと……私も路上販売してみたいなって……」 ロイスはこちらを振り向かない。それどころか、ゆっくりと足を前に動かして店から出ようと……。「さすがにロイスは店頭販売までにしておいてくれる? 何かあったらお父様に申し開きができないよ……」 領主の娘に路上販売はちょっと……。 人だかりができてもし何かトラブルになったりしたら取り返しがつかないも
わたしのお願いは1つだけです。「路上での食品販売許可をいただきたいのです」「路上販売だと?」 ガーランド伯爵のお酒を口に運ぶ手が止まる。「ええ、路上販売です。『龍神の館』の従業員が、街中の路上で料理の販売をする許可をいただきたいのです」「その狙いは?」「はい。現在店頭にお並びいただいているお客様の人数が多すぎて、『龍神の館』の敷地内では捌ききれないという問題が起きております。そのお客様の対応ですが、販売場所を分散して行いたいという狙いがあります」「売上が好調なのであれば、2店舗目を検討すればよいのではないか?」「はい。行く行くはその検討もしていく必要があります。が、それには時間がかかりますし、今長時間お並びいただいているお客様たちの不満解消にはつながりません」 まさに今、現場で起きている問題を解消したいのです! ここから畳みかけていく。「そして、ここが大きなポイントなのですが、金銭の授受から料理のお渡しまで、店舗を介さなくても料理が提供できる仕組みを作り上げましたので、今起きている問題を解消するだけなら2号店は不要なのです」 わたしはタッチパネル式魔力認証注文システムについて説明をする。 ガーランド伯爵は途中からだんだん考えるのを放棄し始めたようで、ハイボールを口に運ぶ頻度が増えていく。逆に、秘書の方のほうがかなり興味を持ってくれたみたいで、前のめりでメモを取っている。 まあ後で、この酔っ払いにも補足説明なんかしておいてくださいね。「つまり、そのなんちゃら注文システムとアイテム収納ボックスを持って街をうろつくだけで、店頭販売と同じことができる、と?」 おー、酔っ払いのクセにちゃんと理解できてんだー。さっすが領主様ー、すごいすごい♪「さようでございます。ご理解いただけたようで何よりです」「それで、路上販売許可を出すと、私に何のメリットがあるのかな?」 はい、きましたね。 タダでは許可できない。そりゃそうでしょう。わかってますわかってます。「今回提案している路上販売は、おそらくほかの領地では実現できていない画期的な販売方法です。それを閣下の指示のもとで行っている。閣下のお力を内外にアピールできるかと」 ガーランド伯爵は目を閉じて深く頷く。 反応はまあまあ? だけどこれだけでは飛びついてくれないか……。「もう1つございま
「お店が人気過ぎて困った!」 いやいや、これは嫌味でも誇張表現ではなくてですね? うわさがうわさを呼び、テイクアウト料理はもう明らかに捌ききれないほどのお客様が殺到して、連日長蛇の列を作られているわけですよ。 ちなみにローラーシューズショーのチケット付きの座席は、3カ月先まで埋まっています。2階席、3階席のVIPルームも半年先まで埋まっていて、あとはお断りしている状況でして……。「売れすぎて困った!」 わたしの商売の才能が憎いっ! ううん、お金は大好き♡「ガーランド領以外からお越しくださるお客様も増えているから、もうコントロールが難しい状況ね……」 ソフィーさんもうれしいやら困ったやら、複雑な表情で自身の頬を撫でている。「このままだとカジノオープンなんてできそうもないですねー。ゆったりとした大人の社交場が……」 早くも2号店を考える? いや、さすがにそれは早すぎるよね……。まだ天使ちゃんたちの教育も満足にできていないし、わたし自身のキャパもオーバーする気がする。2号店なんて構えたら、そこまで目が届くとは思えないし。「せっかく気に入ってリピートしてくださるお客様を長時間並ばせたり、半年先の予約を案内したくはないですよね……」 うちの料理がおいしすぎるから、リピートのお客様はそれでも通ってくれるとは思うけれど、でもそんなストレスはかけたくないなあ。「難しいところよね……。テイクアウト料理は出来合いの料理をお出しするだけなのだから、料理のお渡し口を増やせれば解決しそうだけど……」 ソフィーさんがつぶやいた。 うん、なんか今の言葉にヒントがあった気がする。 料理のお渡し口を増やす。 1つか2つなら、まあ今の敷地内でも増やせるとは思う。 でも、根本的な解決にはならないよね。 もっと大掛かりに料理の受け渡し口を増やす必要があるんだと思うの。「よし、ガーランド伯爵に会いに行きましょう!」 これはガーランド伯爵に協力をしてもらわないといけない案件だ!「急に何事? セドリックと会って何をする気なの?」「交渉ですよ。お客様に満足していただくための、ね」 小首傾げー、ウィンクからのレイバックスピン☆* * *「遠慮するなとは言ったが、急に城に来たりしてどうした? 私も忙しい身なのだが……」 ガーランド伯爵ってば、ご機嫌斜めねー。
わたしのステータス、LUK≪幸運≫を上げただけなのに、どうしてこうなった?-------------------------- アリシア=グリーン 種族:転生人族 Lv.10 HP:3720 MP:1860 STR≪筋力≫:220 VIT≪体力≫ :181 DEX≪器用≫:183 AGI≪敏捷≫:223 INT≪知力≫:301 LUK≪幸運≫:150 スキル:なし --------------------------「ミィシェリア様……ステータスがおかしくなっちゃったんですけど」「とくにおかしいところはありませんよ。アリシアはLUK
「そのポイント、ちょっと待ったー!」「何ですか? 何かおかしなことがありましたか?」 ミィシェリア様が、わたしの頭のほうに伸ばした手を止める。 危ない。このままポイントを付与されてなるものか!「ミィシェリア様~。わたしの前世の記憶ってちゃんと見てくれましたあ?」 交渉だ! ここでがんばらないと!「はい、もちろん確認しましたよ。穏やかな環境でしたので、標準的なポイント計算で――」「そうじゃなくて! わ・た・し・の! 個人の記憶ですよー。ひどいものでしょう? 泣けちゃいますよね……。何一つ良いことがなくて……人生ハードモードだった上に暴走した車に轢かれて21歳(童貞)の若さで命を
「伝えにくいことって……」 はっ! もしかして、この間ボール遊びをしていて教会のステンドグラスを割ったから、罰が与えられる⁉「いいえ。私は女神ですから、そのようなことで怒ったりはしません。ですが、あなたはきちんと謝ることのできる大人になれると良いですね」「はい……ごめんなさい」 黙って逃げてごめんなさい……。「許しましょう。ですが、伝えたいのはそのことではありません」 あれ? ミィシェリア様って、さっきわたしの心の声に返事しなかった?「ええ、あなたの心の声は全部聞こえていますよ。私は女神ですから、信徒の心の声を聞くことができます。神と子の間に隠しごとはできませんから、裏表なく、清
「アリシア=グリーン。10歳のお誕生日おめでとうございます」「あ、ありがとうございます……女神……様」 わたしは頭を垂れ、跪いたまま冷や汗ダラダラだった。 やばい。女神様の名前、度忘れした……。 なんだっけ……。 ここパストルラン王国では、七神の女神が信仰されている。10歳の誕生日に七神いずれかの女神に礼拝し、洗礼を受けることになっているのだけど、だけど……。 わたしが洗礼を受けるのは……えっと、愛の女神様なんだけど……名前が……そうだ、ミィシェリア様! あっぶない、思い出したー!「女神ミィシェリア様。ご機嫌麗しゅう」「もし? 聞いていますか? あなたの名前はアリ







